From TLWiki
;----- シーン09 - カット01 - 昼食/マスマティカからの呼び出し
*start| AM16:30 居住特区/屋台街
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[ mes_blind time="50" ]
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[bg_hyojib bgb="lud_bg_s08_c01_01.png"]
[cross_kirikae ms="2000"]
僕たちが食事を取るあいだ、屋台から客が途切れることはなかった。[sl]
順番待ちの客がなにやら言いたげな眼を向けてくる/四人がけのテーブルには僕とクルスの二人しかいない。[pg]
「貪欲は大罪のひとつなのだけれどね」[sl]
よその方向を向いたまま、クルスは東方の茶を口に持ってゆく。[sl][r]
「指導料と思うしかないね」[sl]
「仙境に至った人間は、大欲から遠ざかるのではないの?」[sl]
「計ってはいけない」[sl]
「これだから東方の人間は……、矛盾を平然と口にする」[sl][r]
テーブルにはタオがやっつけた空の食器が積み重なっていた。老人は好きなだけ食べて、早々に姿を消していた。[sl]
僕は塩と魚のエキスだけで味付けされた粥に匙を沈める。[pg]
「本当に食べないの?」[sl]
「匂いが耐えがたいの。お菓子と茶の香りだけは評価できるのだけれど」[sl]
「僕はこれで育ったからなぁ」[sl]
横たわる文化/香草の匂い一つで意見が割れる。[sl][r]
「しかし、修行をしたのだから食べなければ血肉にならない」[sl]
口にして、僕は簡単なことに気づいた。[sl][r]
「太るのを気にしているの?」[sl]
[ se se="ludesia_se_whip_03.ogg" lp="false" ]
[ qk time="100" ]
「お黙り!」[sl]
テーブルごしに殴られた。[pg]
「また叩く……」[sl]
「淑女に対する最悪の言葉です!」[sl]
「クルスは細すぎるのだから、もっと食べてくれないと僕は落ち着かない」[sl][r]
「えっと」[sl]
「うん?」[pg]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_08.png" ]
「ヤオは……、もっと育っていたほうが、いい?」[sl]
「そうだね」[sl]
うなずいた。[sl][r]
「クルスは骨格も細いんだ。体重を増やさないと攻撃に威力が乗らない」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_04.png" ]
「そういうことではなくて」[sl]
[ font color="0xFF0066" bold="true" italic="true" ]脳足らずが![ resetfont ][pg]
[ char_all_clear ]
「何を怒っているの。それに朝の朝食は栄養が偏っている。ここで少し持ち直した方がいいと思う」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_02.png" ]
「ヤオはわたしの母親を気取りたいの?」[sl]
「僕はクルスを守りたい」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_08.png" ]
「う、うあっ!」[sl]
[ fadeoutbgm time="1500" ]
どうしてかクルスは頬を抱えてしまう。[pg]
[wb]
「そ、それってつまり[ ch text="――" ]」[sl]
「[ ch text="――" ]保護者としての役割を果たさせてくれ」[pg]
[ char_all_clear ]
数秒。[sl][r]
[ bgm bgm="ludesia_bgm_27_fine.ogg" lp="true" ]
「言うべき言葉を持ってこれないのは、男として最低」[sl]
「うん? クルスは何を言っているの」[sl]
僕の問いをクルスは取り合わない。[sl]
後ろを向いた。[pg]
「骨付き肉、ありったけ持ってきやがりませこんちくしょう!」[sl]
僕は首をかしげて、それから言うべき言葉を口にする。[pg]
「クルス、野菜も食べて」[pg]
[ fadeoutbgm time="1500" ]
[wb]
[bg_hyojib bgb="bg_black.png"][bg_kirikae]
[bg_hyojib bgb="lud_bg_s08_c01_01.png"][bg_kirikae]
[ bgm bgm="ludesia_bgm_15_normal.ogg" lp="true" ]
屋台の店主がメニューに『品切れ』という紙を貼り付けた。[sl]
[ ruby text=" アパートメント" ]集合住宅の住人が驚き、それから不満顔になってゆく。[pg]
「きもちがわるい」[sl][r]
クルスはテーブルの上で伏せたまま動かない。[sl]
ぎし、とガタのきたテーブルが食器の重みで傾きそうになる。[sl][r]
「やはりクルスはお腹がすいていたんじゃないか」[sl]
「そうじゃない……、そうじゃなくて……」[sl]
クルスのつぶやき/どこか呪いを思わせる/どうしてか女性客がクルスをなだめるように肩を叩いていった。[pg]
「まだ動けない?」[sl]
返事はなかった。[sl]
日は傾きつつあった。職探しをするには中途半端な時間だ。ルーデシアに食事の支度もしなければならない。[sl][r]
「うう……」[sl]
クルスは目の前の通りだ。[sl]
「今日は[ ruby text=" ニンセイ" ]仁清へ探りを入れておしまいか」[sl]
いつまでも露天で粘っている訳にはいかない、僕はクルスの肩を叩こうと腕を伸ばして。[pg]
「畜生」[pg]
手首をつかまれた/[ se se="ludesia_se_computer_01.ogg" lp="false" ]視界にメッセージの着信アラートが表示された。[sl][r]
「ヤオ」[sl]
「契約は終了したはずだけれど」[sl]
メッセージの送信者/教会特区。[sl][r]
[ font color="0xFF0066" bold="true" italic="true" ]金なら返すつもりはない![ resetfont ][sl]
昨夜のゾンビー警護は失敗した。失点は打ち消すことはできない。[pg]
「しかし」[sl]
報酬の前払いは契約は記されている。返金に関する約定はなかったはずだった。[ se se="ludesia_se_computer_01.ogg" lp="false" ]契約書類のデータコピーを視界に転送/想定文字列を検索/返金に関する該当項目は見つからない。[sl][r]
「読んで」[sl]
どこか怯えた風なクルス/[ se se="ludesia_se_computer_01.ogg" lp="false" ]僕はメッセージを開封する。[sl]
[ font color="0xFF0066" bold="true" italic="true" ]長ったらしい。[ resetfont ][sl]
クルスが勝手にテキストにフィルタリングをかけ、必要なテキストのみを抽出する。[pg]
『本日の夕刻、教父マスマティカの説教にご来席いただきたい。また、説教の後に教父から少々の相談の時間を希望する』[pg]
「わたしたちに、説教だって」[sl]
クルスが顔を上げる。軽蔑の笑みを張りつかせていた。[sl][r]
「直々に、か」[sl]
メッセージの末尾には、貴族の紋章めいた印が刻まれている。[sl]
このルーデシアにおいて、紋章を所有するのは貴族または華族。[sl][r]
「心温まる説教を期待しようじゃないか、ヤオ」[sl]
[ font color="0xFF0066" bold="true" italic="true" ]ああ、神の名を借りた戯言![ resetfont ][pg]
そして、ルーデシアという場所の半分を占有する教会特区、その頂点に立つ[ ruby text=" ファーザー" ]教父マスマティカのものだった。[pg]
[ fadeoutbgm time="2000" ]
[bg_hyojib bgb="bg_black.png"]
[cross_kirikae ms="2000"]
[wb]
;----- シーン09 - カット02 - 教会特区へ移動[sl]
*start| AM17:00 教会特区/居住区
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[ mes_blind time="50" ]
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[ wait time="1000" ]
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[ mes_appear time="50" ]
足を踏み入れた瞬間に、僕たちは違いを理解する。[pg]
[bg_hyojib bgb="lud_bg_s09_c02_03.png"]
[cross_kirikae ms="2000"]
[ bgm bgm="ludesia_bgm_20.ogg" lp="true" ]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_07.png" ]
「ずいぶんと綺麗なこと」[sl]
僕たちの足は、教会特区の整備された石畳を踏む。[sl][r]
[ char_all_clear ]
「神の恵みを」[sl]
僕たちは答えない/薄汚れた姿の信徒はすぐ表情を消して僕たちの横をすり抜ける。[sl][r]
「神の祝福を受けている割に、薄暗いわ」[sl]
「信仰を捧げすぎて、誰のこともどうだっていいんだろう」[sl]
[ font color="0xFF0066" bold="true" italic="true" ]実に素晴らしい話だ。[ resetfont ][pg]
古い時代にあった造物主を求心力とした社会構造は、時代が下るに従い分散した。[sl]
神秘は科学に、信仰は思想と経済に置き換えられた。[sl]
けれど人類は離散し、閉鎖環境に身を置いたことで、神なるものは復活を果たした。[pg]
[ font color="0xFF0066" bold="true" italic="true" ]人間は魂の重みに耐えられないのね。[ resetfont ][sl][r]
「魂の危機を感じたのだろうね」[sl][r]
外在魂に内在魂/根強く残った人間の中枢への操作権限の創出によって、人間は漠然とした危機感を抱いた。[sl]
平安への追求/安易な形/神への回帰が生じた。[pg]
「ある意味で、ルーデシアが創造主と言うことができる」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_01.png" ]
「この場所を造り、人間定義を更新し、神まで用意した」[sl]
[ char_all_clear ]
僕たちは歩いて居住特区からこの教会特区へ移動したため、日はだいぶ落ちている。[sl]
砂漠地帯の苛烈な光線は頭上のドームによって和らげられている/夕暮れの色はそのままに影を落とす。[pg]
「そろそろ建築体も起き出す時間だ」[sl]
意味のある言葉ではない/けれどクルスは立ち止まる。[sl][r]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_01.png" ]
「あれ……」[sl]
「へえ」[sl][r]
彼女が興味を示したものに、僕もつりこまれてしまう。[pg]
[ char_all_clear ]
「この時間に結婚式とはね」[sl][r]
[bg_hyojib bgb="lud_bg_s09_c02_02.png"]
[bg_kirikae]
教会特区において数え切れないほどにある聖堂、その一つから一対の男女が現れる。[sl]
皮肉めいた言葉/矛盾したクルスの目線は柔らかい。[sl]
夫婦の顔には神を信仰する人間の顔に浮かぶ、どこか薄っぺらい笑みはどこにもない。[sl]
ただただ幸福に身を浸した人間の笑顔があった。[pg]
「病めるときも、健やかなるときも、か」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_01.png" ]
「続きは?」[sl]
「しらない」[sl][r]
[ char_all_clear ]
信仰心があるわけではない/僕はこの一説しか知らない部分を口にしてみた。[sl]
僕たちは幸福な姿に背を向けた。[sl]
頭の片隅に、夫婦の親族らしき人間が振りまいた造花のひとひらが残る。[pg]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_07.png" ]
「ゆきましょう、ヤオ」[sl]
それがどうしてか、消えない。[pg]
[ fadeoutbgm time="2000" ]
[ char_all_clear ]
[bg_hyojib bgb="bg_black.png"]
[cross_kirikae ms="2000"]
[wb]
;----- シーン09 - カット03 - マスマティカの説教[sl]
*start| AM17:00 教会特区/大聖堂
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[ mes_blind time="50" ]
[bg_hyojib bgb="lud_in_s09_c03.png"]
[cross_kirikae ms="1000"]
[ wait time="2000" ]
[bg_hyojib bgb="bg_black.png"]
[cross_kirikae ms="500"]
[ wait time="1000" ]
[ position layer=message0 page=back frame="" opacity=64]
[ mes_appear time="50" ]
[ bgm bgm="ludesia_bgm_19_kyoukai_tokk.ogg" lp="true" ]
[bg_hyojib bgb="lud_bg_s09_c03_01.png"]
[cross_kirikae ms="3000"]
説教壇のはるか頭上/バラ窓から射しこむ光は色に満ちている。[pg]
[ char_c tatie="lud_st_masma_03.png" ]
「こうしている今も、街には魂なき者がさまよい歩いているのかもしれません……」[sl][r]
両腕を広げ、長椅子に居並ぶ信徒たちへの説教が続く。[sl]
赤い光に白い光/教会特区の頂点たる[ ruby text=" ファーザー" ]教父マスマティカの細い面差しを染め、神の威光を付け加える。[pg]
[ char_c tatie="lud_st_masma_02.png" ]
「怖れることもあるでしょう。眠れぬ夜を過ごすこともあるでしょう。しかし、決して怖れることはないのです。我々を[ ruby text="あまね" ]遍く照らしてくださる神の光は等しく降り注ぐものであり……」[sl][r]
[ char_all_clear ]
言葉を重ねるたびに、参列する信徒たちの精神に信仰が注がれ、不安は薄らいでゆく。[pg]
[ font color="0xFF0066" bold="true" italic="true" ]言葉という近似を、こうまで使いこなすのは、神しかいないのだな。[ resetfont ][sl][r]
長椅子の一つに収まったクルスは、決して前を向こうとしない。[sl]
アイグラスで顔を隠し、祈るように絡めた手に額を押しつける。[sl][r]
「よくできた信仰装置だ」[sl]
僕はアイグラスの位置を直す。[sl]
*up
旧世代の聖堂建築の再現/内実は最先端の[ ruby text=" テクノアート" ]技術/壁や床には説教の声を増幅し、信徒たちの鼓動のリズムに合わせて波長を調整するシステムが組みこまれていた。[pg]
[ char_c tatie="lud_st_masma_03.png" ]
「昨日にもゾンビーの手によって神の子供たちが命を失ったことは記憶に新しいことでしょう……」[sl]
教父の説教は続く。[pg]
[ char_all_clear ]
僕は長椅子に収まった姿を眺める。人間/[ ruby text=" フリークス" ]怪物/怪物に残された魂が信仰を願うのか。[sl][r]
[ char_c tatie="lud_st_masma_03.png" ]
「しかし、決してこれもまた怖れることはないのです。もちろん悲しむことを忘れてはなりません。しかし同時に人間は未来を見据える眼と足を持ち合わせているのです。人間が人間である限り、必ずゾンビーなどという堕落した者はこの土地から消え去ることでしょう……」[sl]
僕はリヴァイアサン・コートの周囲に特定周波数の音を巡らせ、胸を打つらしい教父の言葉を打ち消していた。[pg]
[ char_all_clear ]
「……剣を」[pg]
「クルス」[sl][r]
「御手には光り輝く剣を。人間には血肉を、地平には照らし出す光明をお与えください。人は葡萄のもたらす赤を忘れ、流れる血を忘れ、切り裂かねば熱き汁のごとき血潮を思い出すことすらままならないのです。暮らし、生き、吐息することで精神は満たされ胸に気づかれていた神の土地は縮み、滅びてしまうのです」[sl]
クルスの隣に座った、年老いた女性が顔を曇らせる。[pg]
女性の思考は透けて見える/クルスのつぶやく言葉は教典にない。[sl]
絡み合わせたクルスの指は震えている。[pg]
「忘れるなかれ、忘れるなかれ。剣はいつなるときたりとも心ある民の頭上に信仰なき悪鬼の喉元にある」[sl][r]
生み出される言葉に意味はない。[sl]
即興で生み出す思想の断片/特定環境下に魂を重ねてしまうクルスの感覚/状況に即した言動を強制される。[sl]
内在魂の副作用/クルスは世界に、環境に酔っぱらってしまう。[pg]
「神の槌はいつ振り下ろされるのでしょうか」[sl]
クルスは問う。[pg]
「神の信仰なきものには罰が下るでしょう」[sl]
マスマティカは語る。[pg]
「神の土を踏むことはかなうのでしょうか」[sl]
問い。[sl][r]
「さあ、教えを胸に日々の暮らしを過ごしましょう。古き良き言葉に従うならば」[sl]
語る。[pg]
[ char_c tatie="lud_st_masma_01.png" ]
「信ずる者は、救われるのです」[pg]
[ fadeoutbgm time="2000" ]
[ char_all_clear ]
[bg_hyojib bgb="bg_black.png"]
[cross_kirikae ms="2000"]
[wb]
;----- シーン09 - カット03 - マスマティカとの会話[sl]
[bg_hyojib bgb="lud_bg_s09_c03_01.png"]
[cross_kirikae ms="2000"]
音楽めいた余韻/マスマティカの説教は残響して、消える。[sl]
信徒たち/満ち足りた顔/暮らしから疑いを放棄した充足があった。[sl]
誰もが席を立ち、それぞれの暮らしへと戻ろうとしていた。[pg]
*up
[ bgm bgm="ludesia_bgm_04_reihaimae.ogg" lp="true" ]
[bg_hyojib bgb="lud_bg_s09_c03_01.png"]
[cross_kirikae ms="2000"]
「クルス」[sl]
「剣を、至善を、至禅を」[sl]
「クルス」[sl]
僕は彼女の肩に手を置く。[sl][r]
「っ……、酔っていた?」[sl]
「久しぶりだった。立てる?」[sl]
「ええ、自分で立てる」[sl]
[ font color="0xFF0066" bold="true" italic="true" ]己の足で歩かなくて、なんの人間でしょうか。[ resetfont ][sl]
席を立ち、信徒たちの向かう出口とは逆へ。[pg]
[ char_c tatie="lud_st_masma_01.png" ]
「わたしの説教は、いかがでしたかな」[sl]
一段高くなった説教壇から、声が落ちてくる。[sl][r]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_07.png" ]
「お説教ね」[sl]
教父マスマティカを、クルスは鼻で笑う。[pg]
[ char_all_clear ]
[ char_double tatie1="lud_st_cruth_07.png" tatie2="lud_st_masma_02.png" ]
「耳を傾ければ、神の言葉には求めるものが見つかるでしょう」[sl]
[ char_l tatie="lud_st_cruth_02.png" ]
「わたしを、宗旨替えできるとでも?」[sl]
[ char_r tatie="lud_st_masma_01.png" ]
「神に少しずつ歩み寄ることこそが信仰です」[sl]
[ char_l tatie="lud_st_cruth_07.png" ]
「気を抜いた途端に、尻を差し出さなければならなくなる」[sl]
[ char_all_clear ]
無言の怒り/マスマティカの後ろに控えていた信徒たちが前に出る。[pg]
[ char_c tatie="lud_st_masma_01.png" ]
「貴方はいかがですか?」[sl]
「僕は東方の出身だ。どうにもなじめない」[sl]
正直に答える僕を、マスマティカは抑制された笑みで応じた。[sl][r]
[ char_c tatie="lud_st_masma_02.png" ]
「興味深い話だ。詳しく話してはいただけないものでしょうか」[sl]
[ char_all_clear ]
「神を一つと決めることがすでに異なる。一切は神であり、一切は無に近しい」[sl]
「よく耳にするスタイルだ。そして、私たちの頭を悩ませるものだ。どうしてそのような矛盾を認めることができるのか」[sl]
マスマティカの口調が崩れる/彼の本質が姿を見せたのだと思える。[pg]
「集約を選んだ神と、分散を選んだ神がいる。人間はいずれかの派閥を選んだ。それが歴史という選択の連続だ」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_masma_01.png" ]
「さすがは文献学者というところか」[sl]
[ char_all_clear ]
「仕事の話は」[sl]
僕は驚かない/マスマティカであれば調べることなど簡単だろう。[sl][r]
[ char_c tatie="lud_st_masma_01.png" ]
「日々の糧を得ることは大切なのでしょう。こちらへ」[sl]
[ char_all_clear ]
彼は僕たちに背を向け、聖堂の奥へと向かい始める。[pg]
[ se se="ludesia_se_walk.ogg" lp="false" ]
[bg_hyojib bgb="bg_black.png"]
[cross_kirikae ms="2000"]
煉瓦造り/分厚い絨毯/石でできた床。[sl]
僕の糸が情報を運んでくる。[sl][r]
[ font color="0xFF0066" bold="true" italic="true" ]できるだけ情報を拾っておきなさい。[ resetfont ][sl]
古めかしい外見/技術によって裏打ちされた、古めかしさだ。[sl]
信徒もマスマティカも一言すら口を開こうとしない。[sl]
何度も階段を上り、距離感を失いそうになる廊下を歩いた。[sl][r]
[ font color="0xFF0066" bold="true" italic="true" ]この広大さは、神のものか?[ resetfont ][sl]
一度も、誰とも会うことはなかった。[pg]
「こちらです」[sl][r]
[ se se="ludesia_se_opendoor.ogg" lp="false" ]
信徒が二人がかりで扉を開けてゆく。[sl]
電子処理のされていない、本物の木でできていた。[sl]
マスマティカに続いて僕たちは足を踏み入れた。[pg]
[bg_hyojib bgb="lud_bg_s09_c03_01.png"]
[cross_kirikae ms="2000"]
「これは」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_masma_01.png" ]
「第二聖堂です」[sl][r]
[ char_all_clear ]
見渡したものへの答えをマスマティカが口にする。[sl]
その場所はマスマティカが告げたとおりのものだ。[sl]
窓からの明かりはない/いくぶんか狭苦しい/けれど造りそのものは僕たちが説教を聞いた聖堂と同じだった。[pg]
[ char_c tatie="lud_st_masma_02.png" ]
「私が子供たちに説教を行う教父の聖堂は第一聖堂になります」[sl]
[ char_all_clear ]
[ char_double tatie1="lud_st_masma_02.png" tatie2="lud_st_cruth_02.png" ]
「他にはいくつあるというの」[sl]
[ char_l tatie="lud_st_masma_03.png" ]
「敬虔な子供は神の魂たる聖人を表す第二聖堂へ、肉は聖女を表す第三聖堂へ」[sl]
[ char_all_clear ]
「そして、霊と肉の合一する第四聖堂」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_masma_01.png" ]
「さすがは文献学者。お詳しい」[sl][r]
[ char_all_clear ]
マスマティカの笑み/背後に強大なるものがあると信じた人間が浮かべる傲慢さが滲んでいる。[sl]
僕は視線を動かす/いい年をした男とクルスが突っ立ったまま話をする状況は、どこか間が抜けている。[pg]
「しかし、多すぎる賢さを神は好みませんがね」[sl]
「僕たちに何をさせたい」[sl]
いつまでも神の[ ruby text=" ドグマ" ]教義に耳を傾けるつもりはない。[pg]
[ char_c tatie="lud_st_masma_03.png" ]
「私たちの立場は大変苦しいものとなっています」[sl]
彼もまた、即座に話題を切り出した。[sl][r]
[ char_c tatie="lud_st_masma_02.png" ]
「立場の苦しさは、昨日の仕事を引き受けた貴方がたなら理解がゆくことでしょう」[sl]
「ゾンビーか」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_masma_03.png" ]
「私たちの子供が住まう土地に、魂なき亡者が歩き回っています」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_07.png" ]
「確かに、神が守るという教義を真正面から否定されたに等しい」[sl]
クルスはかすかに笑う。[pg]
[ char_c tatie="lud_st_masma_01.png" ]
「貴女の言うとおりです。しかし、ただ暮らしている子供たちの命が奪われる姿は見ていたいものではないでしょう?」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_04.png" ]
「まあ、ね」[sl]
[ char_all_clear ]
記憶/倒れ伏した信徒たち/しくじった僕たちにとっては耳が痛い。[pg]
「すでに教会特区でも動いているだろう」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_masma_03.png" ]
「その通りですが、状況の好転は難しいと判断しているのです」[sl]
「何故だ。教会ほどの力があれば、原因を突き止めることだって可能なはずだ」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_masma_02.png" ]
「神の力とはふるうものではありません。ただあることによって、神の子供たちの戒めとなることです」[sl]
マスマティカは重たい息を吐く/従う信徒たちが表情を同じくする。[sl][r]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_07.png" ]
「表だっては動けない」[sl]
クルスはそんなマスマティカたちを笑う。[pg]
[ char_all_clear ]
「どう答えたものか……、暴力などは神に付き従う我々にとって忌み嫌う最たるものでしょう」[sl]
「あの二人組を使っていてもか」[sl]
「意味がわかりませんね」[sl]
答えるつもりはない/マスマティカの返答/その速度が告げる。[sl][r]
「しかし、時間をかけることで事態は収束に向かうとも考えているのです」[sl]
「だろうね」[sl]
時間をかけ、密かに動き続けることができる力を教会特区は持ち合わせている。[pg]
[ char_c tatie="lud_st_masma_03.png" ]
「けれど、時間もないのです」[sl]
「教会特区にとって、ゾンビーはただちに消えなければならないのね」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_masma_02.png" ]
「長い時間ゾンビーを放っておけば、信徒たちの不信を招くでしょう」[sl]
「だから、わたしたちを」[sl]
「ええ」[sl][r]
[ char_all_clear ]
「けれど、どうして僕たちが」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_masma_01.png" ]
「昨日の依頼をしくじったから。どうして選ばれた、ですか?」[sl]
うなずいた。[pg]
[ char_c tatie="lud_st_masma_02.png" ]
「依頼を受けたのは貴方がただけではない。ラリー・フォールも引き受けている」[sl]
「僕たちは金で動きそうなフリークスの一人、そういう認識で正しい?」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_masma_01.png" ]
「ご自由にお考えください」[sl]
肯定/マスマティカは薄く笑う。[sl][r]
[ char_c tatie="lud_st_masma_03.png" ]
「ゾンビーが発生した原因の調査、および犯人がいればその拘束をしていただきたい」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_01.png" ]
「いくら出す?」[sl]
クルスの率直さに、マスマティカたちは眼を大きくする。[pg]
[ char_all_clear ]
「一千万」[sl]
「ただの調査に一千万って」[sl]
「半金は即金で。残りは依頼の完了後に」[sl]
「もし、依頼にしくじった場合は」[sl]
「半金を返す必要はありません」[pg]
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「ずいぶんと大きな話をするね」[sl]
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[ char_double tatie1="lud_st_cruth_02.png" tatie2="lud_st_masma_02.png" ]
「私たちは暴力を振るう訳にはゆきません」[sl]
[ char_all_clear ]
「口止め料を含んでいるのか」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_masma_03.png" ]
「ご自由にお考えください」[sl]
「前金は」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_masma_01.png" ]
「すぐにでも」[sl][r]
[ char_all_clear ]
確認/視界の端に並んだ、決してみたことのない額面が振りこまれた。[sl]
クルスとルーデシアの浪費を精算して、まだ余る。[pg]
「いかがですか?」[sl]
「引き受けますよ」[sl]
クルスに問うまでもない/僕はマスマティカにうなずいた。[pg]
[ char_c tatie="lud_st_masma_01.png" ]
「では、早速お願いしたいのですが」[sl]
「話を聞かせてください」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_masma_02.png" ]
「話といっても、おそらくは貴方がたが知っていることと差はないでしょう」[sl]
「僕たちが知らないと思われることに絞ってください」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_masma_03.png" ]
「では、問うてください」[sl]
[ char_all_clear ]
問うことで互いの前提情報を埋めあう/僕は思考を巡らせる。[pg]
「被害の頻度は」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_masma_02.png" ]
「日を追うごとに酷い状況になっています。今までは子供たちの自衛でどうにかなっていました」[sl]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_04.png" ]
「あいつらか」[sl]
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「神の子供は等しく優秀なのですよ。昨日は貴方がたのお力を借りずともよかったかもしれません」[sl]
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「わたしたちなんか、必要なかったとでも言いたいの」[sl]
[ char_all_clear ]
[ char_double tatie1="lud_st_cruth_03.png" tatie2="lud_st_masma_01.png" ]
「さあ、どうでしょう」[sl]
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気に入らない笑い/ぼかされたノエシスたちの示唆/言い返すことができない。[pg]
[ char_c tatie="lud_st_cruth_07.png" ]
「あんたたちがゾンビーを餌に、信徒どもを引きつけているんじゃないの?」[sl]
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信徒たちは無言で僕たちを取り囲む。[sl][r]
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「そのようなことをしても、危険が大きいだけで利益はない。そうではありませんか?」[sl]
[ char_all_clear ]
「だいたいのところはわかりました」[sl]
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「何一つわからないことがわかった」[sl]
クルスは言う。[pg]
[ char_all_clear ]
「報告は定期的にいただきたいのですが、構いませんね?」[sl]
「明日から調査を始めます」[sl]
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「私はすぐにお願いしたいと申したはずですが」[sl]
「娘に夕食の支度をしないといけなくて[ ch text="――" ]」[pg]
[ char_all_clear ]
「[ ch text="――" ]とても愛らしいお話」[pg]
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言葉が、止まった。[sl]
[wb]
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